|
|
社会インフラ構造物の一般的な定期点検は、近接目視を基本とし、必要に応じて触診・打音による点検が行われているが、現場の条件によっては人が容易に点検場所に接近できない場合がある。そこで、点検の精度向上および安全性向上を目的とした点検支援技術として、高解像度カメラを用いた点検が認められ、点検の現場では高精細画像の活用が進んでいる。一方、点検用画像の撮影時には、人による撮影のほか、ドローンを使用した撮影なども行われ、ピンボケやブレが意図せず発生することがある。そのため、大量の撮影画像の中からピンボケやブレによって点検に使用するのに適さない画像を抽出する作業や再撮影が発生するという課題があった。
キヤノンはこれまでも「ひび割れ検知AI技術」を開発し、社会インフラ構造物の保守・管理に関わる点検作業の効率化をサポートしてきたが、この課題解決のため、CHETとともに新たに「Inspection Image Quality Checker」の共同検討を行った。同ツールでは、レンズ交換式カメラなどに使用されている、各画素が撮像と位相差AFを兼ねる撮像面位相差AF技術「デュアルピクセルCMOS AF」を応用し、画像のピンボケを、その度合いに応じて色分けし可視化することができる。また、ブレの発生状況や基準解像度への達成度なども確認が可能。また、ノートPC上で動作し、1枚あたり数秒で判定が可能なため、点検現場でも確認を行うことができ、大量の画像の中から点検に適した画像と再撮影が必要な画像を自動で短時間に分類することができる。これにより、人手による画像の確認作業負荷を軽減し、点検作業全体のさらなる高度化・効率化に貢献できるとしている。
キヤノンは今後、CHETとともに同ツールの実用性に関する検証を継続し、製品化に向けた検討を続けていく。なお、2021年10月6日より東京ビッグサイトで開催される「ハイウェイテクノフェア2021」のCHETのブースにて同ツールを紹介する予定。
点検画像品質確認ツール「Inspection Image Quality Checker」の主な特長
- 「ピンボケ」「解像度」「ブレ」の3要素で画像を判定し、点検に用いるのに適切な画像を自動で振り分け可能。人手により1枚ずつ画像を確認する負荷軽減に貢献すると同時に、一定基準での画像精査が可能になるため、撮影画像の品質を保つことが可能。
- ピンボケ判定では、撮像面位相差AF技術「デュアルピクセルCMOS AF」の活用により、各画素のピンボケを、その発生量に応じて色分けして表示することが可能。ピンボケの発生量に基準値を設け、基準値を超えるピンボケが発生している画素が画像全体に占める割合によって、画像が点検用として適切かどうかを判別。
- 解像度判定では、1画素あたりに写る被写体のサイズ(mm)で解像度を確認。解像度が不十分な場合は、捉えるべきひび割れが画像に写らなくなり、実際には存在するひび割れを見落としてしまうため、撮影対象となるひび割れ幅に応じた解像度の基準値をあらかじめ設定し、基準値に対する達成可否を自動で判定することで細かいひび割れの見落としを防止。
- ブレ判定では、画像解析によりブレの発生量を数値化することで、あらかじめ設定した基準値以上のブレが発生していないかを判定。
|