富士通とマイクロソフト コーポレーション(本社:米国ワシントン州レドモンド、CEO:サティア・ナデラ)は、AI(人工知能)分野で協業することで合意した。
同合意に基づき、両社はまず、働く人を中心にした働き方改革の領域での協業を推進する。マイクロソフトの統合型クラウドサービス「Microsoft
365」と、それをベースとして富士通が社内外で推進してきた企業へのグローバルコミュニケーション基盤の導入の中で蓄積してきた知見やノウハウ、および富士通のAI技術「FUJITSU
Human Centric AI Zinrai」(以下、Zinrai)とマイクロソフトの「Microsoft Azure」 上で提供されるAIプラットフォームサービスを組み合わせた新たなソリューションを共同で開発し、2018年第2四半期(4-6月期)からの日本市場でのサービス提供を目指し、順次グローバルに展開していく。
協業の背景
富士通とマイクロソフトは、2002年に企業向けソリューション分野でグローバルアライアンスを締結して以来、クラウド分野や製造業向けIoT分野など、市場の動向に合わせて協業領域を拡大してきた。働き方改革の領域でも2015年より強固な協業関係を構築し、マイクロソフトの技術支援の下、富士通は全従業員約16万人を対象に、統合型情報共有クラウドサービス「Office
365」をベースとするグローバルに統一されたコミュニケーション基盤を導入するとともに、その社内実践で得た知見やノウハウを生かして、国内約150万人のお客様にグローバルコミュニケーション基盤を提供してきた。
今般、急速に進化するデジタル技術を活用した生産性向上に向けた動きがグローバル規模で活発化している中、富士通とマイクロソフトはこれまでの協業の枠組みをAI分野にも拡大し、まずは両社が持つAI技術やサービスを活用したさらなる働き方改革を実現するソリューションを共同で開発、提供していくことで合意した。
協業の概要
富士通とマイクロソフトは、「Microsoft 365」(注1)の文書、メールなどのビッグデータを「Microsoft Graph」(注2)を通じて集計し、企業内に蓄積されている様々なビッグデータと、富士通の「Zinrai」、およびマイクロソフトのクラウドプラットフォームサービス「Microsoft
Azure」上で提供されるAIプラットフォームサービスや「Microsoft 365」などを組み合わせ、働く人を中心とした働き方改革を実現する新たなソリューションを共同開発する。
さらに、共同開発したソリューションについて両社内の複数国で実証を行い、ソリューションの品質強化や導入に向けた知見、ノウハウの蓄積を行った上で、日本市場を皮切りに2018年第2四半期(4-6月期)より富士通のクラウドサービス「FUJITSU
Cloud Service K5」、および「Microsoft Azure」上から提供を開始し、その後順次グローバルに展開していく予定。
共同開発するソリューションによる顧客価値
- クリエイティブワークに集中し、高い付加価値を産み出す
「Microsoft 365」を利用することにより蓄積されたビッグデータを「Microsoft Graph」を通じて集計することで、これまで見えなかったメールやカレンダーの利用状況をマイクロソフトの「MyAnalytics」や「Workplace
Analytics」(注3)などが可視化し、富士通の「Zinrai」がメールの内容に含まれる業務の重要性や緊急性を読み取り、重要なタスクは利用者に対応を促す。これにより、利用者は、優先度の高いタスクからスピーディーに対応し、限られた時間の中でアイデア創出などのクリエイティブワークにも注力できるようになるため、今までより高い付加価値を生み出すことができる。
- AI活用により定型作業を自動化、省力化
マイクロソフトのAIプラットフォームサービス「Microsoft Cognitive Services」や「Microsoft Azure Bot
Service」などを使い、富士通の対話型AIや自然文解析技術と組み合わせることで、業務の自動化や省力化を実現する、より人中心(ヒューマンセントリック)なユーザエクスペリエンスを提供する。例えば、会議調整は、AIとの対話形式により、参加者に共通する空き時間の検索や、参加者の都合を考慮した日時や会議形式、場所などの候補がリストアップできるようになる。
- 組織の壁を越えて、最適な人材、知見、ネットワークを発掘
組織内の優秀な人材や有益な文書を見つけるには、人やモノのつながりを活用することが有効的と考えられる。このため、人やモノのつながりをグラフ構造で表現した知識ベースであるナレッジグラフ(注4)を活用する。さらに、人やモノのつながりの特徴を富士通の「Zinrai」で解析し、これをナレッジグラフに加えることで、検索したい人やモノとの関連性の強さに基づく高度な情報検索を実現する。これにより、優秀な人材や有益な文書を発掘でき、プロジェクト立ち上げ時の最適なメンバーの選定など有効な情報活用が可能になる。
- 人、組織、会社ごとの業務の生産性やモチベーションの要因を解明
「MyAnalytics」や「Workplace Analytics」などを活用すると、個人の働き方、チームとしての働き方の可視化ができる。さらに、ナレッジグラフや、富士通研究所が開発したグラフ構造のデータの高精度な解析を可能とする機械学習技術「Deep
Tensor®」(注5)を組み合わせてベンチマークすることで、生産性やモチベーションの高い人、組織、会社がどのような働き方をしているのか、また何がその重要な原因となっているのかを解明することができ、真の働き方改革につなげることができる。
今後の展開
両社は、共同開発するソリューションの導入コンサルティングサービスに加え、富士通のデジタル革新の実現に向けた共創ワークショップ空間である「富士通デジタル・トランスフォーメーション・センター」(所在地:東京都港区)や、マイクロソフトの最新テクノロジーを体感できる施設「マイクロソフトテクノロジーセンター」(所在地:東京都港区)での体験コースを検討していく。
両社は、既存の「Office 365」および「Microsoft 365」の利用者を中心に新規顧客開拓も共同で実施し、2020年までにグローバル市場で新たに2,000億円規模のビジネスを開拓することを目指す。
注1 Microsoft 365: 創造力とチームワークを高め、個人と組織のパフォーマンスを最大化して活躍する働き方を、安心・安全な環境で支援するインテリジェントな統合ソリューション。最新の統合型情報共有クラウドサービス「Office
365」、最新オペレーティングシステム「Windows 10」、IDベースのセキュリティソリューション「Enterprise Mobility
+ Security」が含まれる。
注2 Microsoft Graph: 「Microsoft 365」を利用すると自動的に蓄積されるメール、カレンダー、連絡先、ドキュメント、ディレクトリー、デバイスのビッグデータにアクセスするためのAPI。Fortune
500の会社の85%が既に「Microsoft Graph」を利用可能。8兆個のリソースが格納されており、ユーザはアクセス権のあるデータにAPIを通じて安全かつ容易にアクセスできる。
注3 MyAnalytics/ Workplace Analytics: 「Office 365」に搭載されている機能で、「ワークスタイルビッグデータ」から働き方のデータを分析し、AIを活用して個人やチームに気づきを提供。会議やメールなどに費やしている時間を見える化し、社員自身・チームが、AIを使って働き方を振り返ることで無駄な時間をなくしたり、コラボレーションを活性化して、付加価値の高い働き方を実現することをサポート。
注4 ナレッジグラフ: 意味付けされたグラフ構造の知識ベース。様々な情報源から収集した情報を意味を表す関係性でつなぎ合わせたもの。
注5 Deep Tensor: 人やモノのつながりを表すグラフ構造のデータから新たな知見を導く技術。(2016年10月20日 富士通プレスリリース)
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