2019年7~12月
 
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★これより以前のニュースは<library>に収録しています。   2019年1~6月


2019-12-19

キヤノン 
ディープラーニングを用いて群衆人数を算出する映像解析技術を開発
数千人規模の群衆人数をリアルタイムにカウント可能

 キヤノンは、ディープラーニング(深層学習)技術を用いて、ネットワークカメラで撮影した映像から、数千人規模の群衆人数をリアルタイムにカウントする映像解析技術を開発した。



群衆人数のカウント例


 近年、防犯や防災、人の混雑状況の把握、マーケティングなど、さまざまな用途において、ネットワークカメラで撮影した映像の活用が進んでいる。中でも、世界各地で開催される大規模なイベントなどにおいて、万全の警備や適切な誘導のために、混雑状況をリアルタイムに把握したいというニーズが高まっている。

 一方、これまでの動体や人物の顔を検出する映像解析技術は、人が密集する混雑した状況では、体の重なりや顔の向きなどの影響を受けるため、群衆人数を正確に数えることが難しいという課題があった。このような課題を解決するため、キヤノンは、ディープラーニング技術を用いた映像解析技術を開発した。

 キヤノンが開発した映像解析技術は、ネットワークカメラで撮影した映像や、ビデオ管理ソフトウエアに保管した録画映像から人の頭部を検出することで、人が密集している状況でも、人数をカウントすることができる。また、指定した領域の中にいる人数の表示や、推移のグラフ表示ができるため、混雑状況の把握や分析に活用することができる。加えて、対応できる画角が広いためカメラの設置場所の自由度が高く、さらにGPU※1を搭載していない一般的に使われるPCでも動作するため、設置・運用コストを抑制することができる。

 これにより、都市や公共施設、スタジアムなどの監視においてデータを活用した警備計画の立案、警備員の効率的な配置に役立つほか、イベント会場や店舗での集客状況の把握、広告効果の検証など、さまざまな用途での導入が期待される。

 なお、日本国内では、キヤノンマーケティングジャパンが本技術を活用した映像解析ソフトウエア"People Counter Pro"を発売する予定※2


※1Graphics Processing Unitの略。
※2海外では、各国・地域の販売会社が本技術を活用した映像解析ソフトウエア"Crowd People Counter"を発売済み、または発売予定。




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2019-11-25


映像から人の様々な行動を認識するAI技術「行動分析技術 Actlyzer」を開発
大量の学習データが不要となり短期間で現場に導入可能

~富士通研究所とFRDC~


 富士通研究所と富士通研究開発中心有限公司(FRDC)は、大量の学習データを準備しなくても、映像から人の様々な行動を認識するAI技術「行動分析技術 Actlyzer(アクトライザー)」を開発した。

 従来、AIで人の行動を認識するためには、認識対象となる行動ごとに大量の学習用の映像データが必要となるほか、新たな行動を追加するにはまた一から映像データを収集する必要があり、実際には現場導入までに数カ月の時間を要するという課題があった。

 今回、人の行動は、歩く・首を振る・手を伸ばす、などの人の基本的な動作の組み合わせなどから構成されているという特徴を活かして、約100種の基本動作をあらかじめ学習して認識できるようにしておき、それを組み合わせることで、不審行動や購買行動といった人の複雑な行動を認識することを可能にした。

 同技術により、認識したい行動を基本動作の組み合わせで指定できるため、人の様々な行動をそれぞれ認識するシステムを短期間で現場に導入することが可能になる。これにより、従来目視で行っていた不審者の発見の自動化、小売店での来店者の購買行動の認識からそれぞれの商品の関心度の調査の実施、工場での熟練者と初心者の技能比較など、様々な業務のセキュリティ向上や現場改善などの課題解決を支援する。

 開発の背景

 近年のAI技術の進歩に伴い、ディープラーニングによって映像から人の行動を認識することが可能となってきている。しかし、例えば不審行動を認識するためには、その行動が含まれる映像を大量に準備する必要があり、実質的に収集できない場合や、時間と手間が多大にかかる場合があるため、簡単に試すことが難しく、現場への導入が進まない要因となっている。

 課題

 認識したい人の行動が、例えば、歩いている・走っている・止まっているといった単純な日常の基本動作だけであれば、映像データを収集することは比較的容易なため、映像データのどの部分に認識したい動作が写っているかの情報を付与して学習することで、認識することは可能。一方で、例えば家の周りをきょろきょろと見渡しながら行ったり来たりするような不審行動などは、複数の動作が組み合わされて構成され、パターンも多様に存在する複雑な行動となり、その映像データを大量に収集することは難しく、現実的に認識することができなかった。

 開発した技術

 今回、富士通研究所とFRDCは、大量の映像での学習が不要で、複数の動作が組み合わさった複雑な行動を認識できる「行動分析技術 Actlyzer」を開発した。同技術の特長は以下の通り。
  1. 複雑な行動を構成する基本動作を高精度に認識

    複雑な行動を構成する要素となる約100種類の基本動作を独自に定義し、この全ての基本動作をディープラーニングにより認識できる技術を開発した。同技術では、あらかじめ大量の映像データから認識したい基本動作を学習することで、約100種類の基本動作を平均90%以上の精度で認識できる。これにより、歩いている・走っているという基本動作のほか、例えば、首を右に回す、首を左に回す、顔を上に傾ける、顔を下に傾けるなどの細かい基本動作においても、それぞれ高精度に認識できる。

  2. 基本動作の組み合わせから複雑な人の行動を容易に認識

    基本動作の組み合わせや順番、発生場所、行動の対象などを指定することで、不審行動のような複雑な行動を認識できる技術を開発した。同技術により、簡単な設定で様々な行動を認識することができ、またパラメーター変更などによりすぐに認識精度を調整することができる。

    例えば、扉の前にいる、座る、鍵穴を見る、鍵穴に手をあてる、というように基本動作の組み合わせとその発生場所、および行動の対象を指定することで不審行動として認識できるようになる。さらに、首を左右に回してあたりを見回すなどの条件の追加や、各行動の継続時間の指定により、認識の精度を調整することが可能となる。


 効果

 屋内や屋外で撮影された21種類の映像データを使って、検出したい8種の不審行動(家の様子を伺う、凶器を振り回す、など)を認識する実験を行ったところ、全ての不審行動が認識できることを確認した。この8種の不審行動を検出するための基本動作の組み合わせのルール作りは1日で作成できたため、お客様は1日の評価実験だけで同技術の現場への適用可否が判断できる。

 なお、同技術は、不審行動に限らず、店舗での来店客の購買行動の分析、店員の応対動作の確認、製造現場での作業時間測定や作業手順の確認など、様々な業種・業務において映像から人の行動を認識し、業務品質の向上や効率化にも活用できる。

 〈様々な業種・業務への適用イメージ 〉


 今後

 同技術は、実際の現場での実証を終えており、様々な分野において提供可能。また、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」のZinrai活用支援サービスとしても実用化を目指す。



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2019-11-22

コニカミノルタ、東京大学・高前田准教授と共同で画像IoT、AIを実現する
ディープラーニング向けハードウェアコンパイラを開発、オープンソース化

 コニカミノルタは、同社の成長戦略として強みである画像・映像の高速処理技術を活かした画像IoT、AI*技術開発を推進しているが、このほどAIハードウェアに関する研究を国立大学法人東京大学 大学院情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻 高前田伸也准教授と産学連携により、ディープラーニングを高速に処理するハードウェアのためのコンパイラ「NNgen(エヌエヌジェン)」を開発し、このコンパイラをオープンソースとして一般公開することを発表した。


ディープラーニング推論用ハードウェア開発におけるNNgenの位置付け


 【提供価値】

 ディープラーニングの活用により、画像・映像の解析処理などの分野で劇的な精度向上が実現されてきた。一方で膨大な計算が必要となるため、特に現場にあるIoTデバイス(エッジデバイス)での活用に向けて省電力かつ高性能な専用ハードウェア(アクセラレータ)の重要性が増してきている。このような専用ハードウェアを実現する方法の一つに、回路構成の変更可能な集積回路である「FPGA(Field Programmable Gate Array)」を用いる方法がある。近年では、FPGAと高性能なCPUや高速I/Oなどがワンチップに集積されたFPGAが製品化され、システム全体をワンチップで構成でき、性能と柔軟性を高い電力効率で実現できる。ディープラーニングモデルを手軽にかつ効率的にFPGA実装できるコンパイラ「NNgen」を活用することで、従来は技術的に困難であった様々なエッジデバイスへのディープラーニング技術の導入が可能になる。

 【NNgenについて】

 「NNgen」は、用途に応じて構築・学習済みのディープラーニングモデルを、高速に処理できる専用アクセラレータをFPGA上に手軽にかつ効率的に実装するためのドメイン固有型の拡張可能な高位合成コンパイラ。モデルに特化したハードウェアアクセラレータのハードウェア記述(Verilog HDL)およびIPコア設定ファイル(IP-XACT)を生成する。コニカミノルタと東京大学・高前田准教授はコンパイラのオープンソース化を通じて、より幅広い開発者、研究者に利用してもらい、コンパイラの進化を期待すると共に、AIの普及をサポートし社会の発展へ貢献していくことを目指している。
 NNgenは、ソフトウエア開発のプラットフォームGitHubにて、ソースコードを公開している。

 【オープンソースカンファレンスへの出展について】

 コニカミノルタは、オープンソースカンファレンス2019/Fallへ出展し、NNgenのデモンストレーション及びセミナーを行う。



日程
 
2019年11月23日(土) 10:00~18:00(展示:11:00~17:30)
11月24日(日) 10:00~17:30(展示:10:00~16:00)
※11:00より東京大学・高前田准教授によるNNgenセミナーを予定
 
展示会場
明星大学 日野キャンパス 28号館 2F
セミナータイトル
NNgen: ディープニューラルネットワークのモデル特化FPGAハードウェアを生成するオープンソースコンパイラ




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2019-11-11

シャープ、30V型4Kフレキシブル有機ELディスプレイを開発
表示部を巻き取り、すっきりと収納できる『ローラブル(巻取型)』商品の実現へ



 シャープは、日本放送協会(NHK)と共同で、30V型4Kフレキシブル有機EL(OLED)ディスプレイを開発した。
 同開発品は、対角30インチ(約76cm)のフレキシブルなフィルム基板上に、RGB(赤・緑・青)の各色に発光(RGB発光方式)する素子を形成した有機ELディスプレイであり、この構成によるものとして世界最大※1となる。各色に発光する素子を蒸着方式で高精度に形成することで、カラーフィルターを不要とし、高い光利用効率を実現している。また、フィルム基板を用いることで、薄さ約0.5mmのパネル表示部をコンパクト(半径:約2cm)に巻き取り、下部の筐体にすっきりと収納することができる。

 有機EL素子を駆動する薄膜トランジスタとしてIGZO※2を採用。NHK独自の信号処理やパネル駆動技術の活用により、画面の明るさの均一性や動画の鮮明度を向上させている。

 同社は、2018年6月に日本初となるスマートフォン向けフレキシブル有機ELディスプレイの量産を開始している。

 同開発品は、11月13日(水)から15日(金)まで幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催される国際放送機器展「Inter BEE 2019」のNHK/JEITA(電子情報技術産業協会)ブースにて展示する。

  主な特長

 1.世界最大、対角30インチのフィルム基板を用いたカラーフィルターレス(RGB発光方式)の高精細4Kフレキシブル有機ELディスプレイ

 2.カラーフィルターレスのパネル構造により、高い光利用効率を実現

 3.フィルム基板の柔軟性によって、表示部をコンパクトに収納(巻取半径:約2cm)

 4.NHK独自の信号処理やパネル駆動技術により、明るさの均一性や動画の鮮明度を向上


※1 フィルム基板上に、カラーフィルターを用いることなく、RGB(赤・緑・青)各色に発光(RGB発光方式)する有機EL素子を備えたディスプレイとして(2019年11月8日現在。シャープ調べ)。

※2 In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)、O(酸素)により構成される酸化物半導体。有機ELや液晶ディスプレイを駆動するTFT(薄膜トランジスタ)の半導体材料として用いられる





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2019-11-11

高輝度モデルプロジェクターのホワイトモデル
『EB-L20002U』『EB-L12002Q』をラインアップ追加
エプソン


『EB-L20002U/EB-L12002Q』


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2019-11-7


NEC、歩きながらでも虹彩認証を可能にする技術を開発

世界No.1の虹彩認証エンジンを活用したウォークスルーでの本人確認を実現




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2019-11-1

パナソニック ソリューションテクノロジー、富士通、三菱電機、
AI検索機能の共同開発で特許調査業務の効率化を実現


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2019-10-24

レジに並ばずに買い物ができるスマートPOSアプリ
U.S.M.Hグループのスーパーマーケット実店舗に導入
富士通が共同開発

 店内での利用イメージ


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2019-10-15

多言語通訳サービスを金融機関、行政向けに開発
AIとヒトのハイブリッド通訳により、専門的な業務をサポート

~Business Innovation Center


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2019-10-2


PrecisionCoreプリントヘッド搭載の『R&D用インクジェット装置』を開発
 セイコーエプソン


R&D用インクジェット装置


 セイコーエプソンは、このほど、PrecisionCoreプリントヘッドを搭載した『R&D用インクジェット装置』を開発した。

 同製品は、インクジェット技術の応用に関する研究開発を促進し、インクジェット技術の新たな用途を拡大することを目的に開発したもの。インクジェット技術を用いた生産プロセスの革新や、インクジェットに適合した新素材の開発などに取り組む企業・研究機関向けに、2020年3月から日本国内での販売を開始する予定。


 エプソンは、長期ビジョン「Epson 25」の第2期中期経営計画において、基本方針のひとつとして「資産の最大活用と協業・オープンイノベーションによる成長加速」を掲げている。特に、インクジェットイノベーションにおいては、PrecisionCoreを中心としたコアデバイスを用いたインクジェットヘッド外販ビジネスとオープンイノベーションの強化を目指している。

 『R&D用インクジェット装置』の開発は、この方針に基づく、インクジェット技術を軸としたオープンイノベーションの取り組みの一つ。エプソンは1990年代からインクジェット技術の工業分野への応用に取り組み、2006年にはインクジェット印刷による液晶カラーフィルターの製造装置を実用化した実績がある。また、回路基板などのデバイスの試作やOLEDインクの開発も、自社開発したインクジェット描画装置を用いて行っており、そのノウハウが同製品に生かされている。

 『R&D用インクジェット装置』は従来の社内装置と比較して大幅に省スペース化しながら、お客様の使いやすさを高めており、インクの噴射性能評価から任意の素材を用いた試作まで行うことができる点が特長。また商品化後も、導入されたお客様のニーズに応じて継続的に機能を拡充し、オプションとして提供する予定。

 さらに、この『R&D用インクジェット装置』には、高精度で耐久性に優れたエプソン最先端のインクジェットプリントヘッド「PrecisionCoreプリントヘッド」を搭載している。「PrecisionCoreプリントヘッド」は、最小単位であるプリントチップを組み合わせることで、多様なヘッド構成に対応できる拡張性も有しているため、『R&D用インクジェット装置』を用いた研究開発を通じてインクジェット技術の新たな用途が確立された際には、同品質のプリントヘッドを実用に適した構成で供給することも可能となる。

 なお、同製品の開発に先行する取り組みとして、7月にはインクジェットを用いたフレキシブル基板の製造・販売を行うエレファンテックと資本業務提携を行った。また富士見事業所(所在地:長野県諏訪郡富士見町)に開設した「インクジェット イノベーションラボ富士見」を拠点として、同社を含め、企業・研究機関等と連携した研究を開始している。


 開発製品の概仕様

名称 R&D用インクジェット装置
サイズ 横幅910mm×奥行900mm×高さ1860mm
プリントヘッド PrecisionCore
主な機能 インク滴の飛行観察機能、インク滴の着弾観察機能、
100mm角ステージへの高精度描画機能
販売開始時期 2020年3月予定
 
※インクジェット技術の応用
「液状の材料を正確な位置に、必要な量だけ吐出する」というインクジェット印刷の特性を生かして、紙に文字や画像を印刷する従来の用途だけではなく、新たな用途に技術を応用する取り組みのこと。
一例として、銀ナノインクを基材に印刷して配線基板を作る、OLEDインクを印刷してディスプレイのカラーフィルターを作るといった用途があり、今後はバイオプリンティングなど幅広い分野への応用可能性も期待されている。




 
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2019-9-19


キヤノン

レンズ交換式カメラの遠隔操作を実現するリモート制御ソリューションを開発 


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2019-9-17

最適なアクションプランを提案、「Wide Learning」の新技術を開発
購入を高めるマーケティング施策や不良品を削減する機械制御方針などをAIが立案
富士通研究所


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2019-8-19

NEC
従来の半分程度の学習データ量でも高い識別精度を維持できる
ディープラーニング技術を新たに開発

 NECは、従来の半分程度の学習データ量でも高い識別精度を維持できるディープラーニング技術を新たに開発した。

 識別精度の向上には、識別が難しい学習データをより多く学習することが有効だが、学習に適した質の良いデータを十分に確保することが重要。同技術は、ニューラルネットワーク(注1)の中間層で得られる特徴量を意図的に変化させることで、識別が難しい学習データを集中的に人工生成します。これにより、少ない学習データ量でも識別精度を大きく向上させ、ディープラーニングを適用したシステムの開発期間短縮に貢献する。

 具体的には、ディープラーニング技術の適用に必要な学習データ量を半分程度に削減する。また同技術は、データの種類を問わず汎用的に適用可能であることから、専門家による調整が不要になる。これにより従来、学習データ収集時間やコストの高さが阻害要因となっていた製品の外観検査やインフラ保全など、さまざまなシステムの早期立ち上げを可能にする。

 近年、ディープラーニング技術は画像・音声認識を主体に飛躍的な発展を遂げ、セーフティ、ものづくり、インフラ保全など幅広い分野での活用が広がっている。例えばものづくりの分野では、製品の外観検査において、人材確保が難しい熟練検査員をカメラによる画像認識で代用したいという要望がある。外観検査をディープラーニングで行うには不良品データを学習する必要があるが、発生頻度の低い不良品は大量に得ることが難しいため、不良品データの収集や不良品を模擬したデータ作成に多大な時間とコストを要していた。

 このような問題に対し、従来はデータ拡張(注2)と呼ばれる、学習データを意図的に加工・変形させることでデータ量を人工的に増やす手法が用いられていたが、識別精度を高める効果的な学習データの生成までには至っていなかった。さらに、対象のデータ種類に応じて専門家がデータの増やし方を調整する必要があるため、様々な種類のデータに短期間に適用することは困難だった。

 
同技術の特長
  1. 必要となる学習データを従来技術に比べ半分に削減
    識別精度の向上には、識別が難しい「苦手な学習データ」をより多く学習することが有効であると広く知られている。データ拡張と呼ばれる従来技術では、ニューラルネットワークに入力する前にデータを意図的に加工・変形させ、学習データ量を人工的に増やしていた(例えば画像に対しては、回転や拡大・縮小、ノイズの付加など)。しかし、このような増やし方では、「苦手な学習データ」の量が不十分で、かつ識別精度向上に寄与しないデータも多く生成され、十分な学習効果が得られなかった。
    同技術は、ニューラルネットワークの中間層で得られる特徴量を意図的に変化させることで、識別が失敗しやすい「苦手な学習データ」を集中的に人工生成し識別精度を高める。同技術を公開データベース(手書き数字認識:MNIST、物体認識:CIFAR-10(注3))にて評価し、学習データ量が半分でも従来技術と精度が変わらないことを確認した。
  2. データの種類の違いによる専門家の調整が不要
    従来のデータ拡張では、データの種類毎にデータの生成方法を変える必要があった。例えば、画像では大きさや回転角度など、音声では声の高さや話す速さなどを変えることでデータを人工的に増やしていた。さらに、専門家がデータ生成方法を慎重に選び、学習に悪影響を及ぼすデータが発生しないよう調整する必要があった。
    同技術は、ニューラルネットワーク内部の数値に基づいて自動的に学習データを生成するため、多様なデータに対して汎用的かつ効率良く適用することができ、専門家による調整を不要にする。


 なお、今回の成果に関してニューラルネットワークの国際会議「International Joint Conference on Neural Networks」(IJCNN2019、期間:2019年7月14日(日)~19日(金)、場所:ハンガリー・ブダペスト)において、7月15日(月)に発表している。(https://www.ijcnn.org/)


(注1)
ニューラルネットワーク:人間の脳の仕組みを模したモデリング手法。
ニューラルネットワークにデータを入力すると、そのデータが中間層を伝わり、出力層から認識結果として出力される
(注2) データ拡張:データを加工・変形することで擬似的なデータを生成する手法。例えば、画像認識では、入力画像の大きさや回転角度を変えることでデータを生成する。 (注3) MNIST:0から9までの10種類の手書き数字画像からなるデータセット。
CIFAR-10:飛行機、鳥、犬など10種類の画像からなるデータセット。
いずれも機械学習の精度評価に標準的に用いられる公開データセットである。




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2019-7-31

360°映像表示可能な円筒透明スクリーンディスプレイを
米国・SIGGRAPH2019に出展
~ソニー~

 ソニーは、米国・カリフォルニア州ロサンゼルスにて7月28日(現地時間)より開催されているコンピュータグラフィクスとインタラクティブ技術の国際会議「SIGGRAPH 2019」において、ホログラムスクリーン技術を使った360°映像表示可能な円筒透明スクリーンディスプレイ(開発品)を展示し、注目を集めている。

 同開発品は、透明な円筒スクリーンに映像を投影することで、周囲360°どこからでも映像を楽しむことができるディスプレイ。通常、光は透明な物体に対して透過するため、透明ディスプレイは、その透明度と投影された映像の輝度を両立するのが困難だった。今回ソニーは、高い透明度を保ちながら高輝度の映像表示が可能なホログラムスクリーンを新たに開発した。また、独自の円筒投影光学設計により360°全方位から鮮やかな映像の視聴を可能にした。これらの技術により、周囲の空間と映像が融合した新たな映像体験を提供する。


 360°映像表示可能な円筒透明スクリーンディスプレイ(開発品)


 また、SIGGRAPH2019では、同開発品以外にも網膜直描技術を使ったフルカラーのARアイウェアの試作機の展示も行っている。


 360°映像表示可能な円筒透明スクリーンディスプレイの展示内容について

 SIGGRAPH2019では、同開発品を使用した下記3種類の展示を行っている。
  1. 360°高速カメラトラッキングによる2D映像への実在感付与
    毎秒1,000フレームで撮像が可能な高速ビジョンセンサー(IMX382)を用いた高速カメラにより、視聴者の位置を360°シームレスにリアルタイムトラッキングすることで、常に円筒内にあるように映像を表示し、2D映像でありながら実在感の高い表現を実現している。
  2. 開発品を複数台連動させることによる新しい空間演出アプリケーションの提案
    同開発品を複数台使用し、それぞれの映像を連動させたデモ展示を行う。映像クリエイターに新たな空間演出手法を提案する。
  3. 360°映像を活かした、光と音のリアルタイムインタラクション
    360°映像とそれに協調するサウンドをハンドジェスチャーでリアルタイムに操作し、新しいインタラクティブな体験をお楽しみいただけるアプリケーション。
    同アプリケーションはソニー・インタラクティブエンタテインメントが開発を行い、デモ展示に協力している。

 SIGGRAPH 2019(Special Interest Group on Computer Graphics)

 米国ACM(Association for Computing Machinery)主催によるコンピュータグラフィクスとインタラクティブ技術関連で世界最大規模の国際会議。(SIGGRAPH 2019のWEBページ
  • 会期:
    2019年7月28日(日)〜8月1日(木)
  • 会場:
    米国カリフォルニア州ロサンゼルス ロサンゼルス・コンベンションセンター
  • ソニーブース: Emerging Technologies ET-118



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2019-7-18

熟練者の意図を学習し、意思決定を模倣するAI技術を開発

~高度なスキルが必要な実業務において10倍以上の効率化を確認~
NEC

 NEC は、熟練者の過去の行動履歴データから、その卓越した認知・判断に基づく意図を意思決定モデルとして学習し、高度なスキルが要求される業務を大幅に効率化するAI技術を開発した。本技術を、属人的な業務の意思決定プロセスに適用することにより、業務負荷を大幅に軽減することができ、業務スピードの大幅な向上が可能となる。

 本技術は、逆強化学習(注1)のフレームワークをNEC独自のアルゴリズムで拡張し、従来、技術者が行っていた意思決定モデルの構築を自動化する。人手では定式化が困難な意思決定問題に対して、熟練者の過去の行動履歴データから意思決定モデルを作成することで、熟練者と同等の判断を迅速かつ自律的に導き出す。本技術は、主に以下の領域に対して適用が可能。


 1) RPA(Robotic Process Automation)を適用できない複雑な意思決定を必要とする業務領域(例:営業活動やプラント運転など)

 2) 人の判断・動作を物理的に再現する領域(例:自動運転やロボット制御など)

 また、今回開発した技術をTV放送局の広告スケジューリング業務(注2)に適用し、実データを使った性能評価を実施した。本業務は、各CMにおける要件・制限事項と、放送枠の活用方法など放送局側の要件の両方を考慮しなければならず、高度なスキルやノウハウが要求される。この業務に本技術を活用した結果、経験豊富な熟練者と同等レベルの意思決定を10倍以上のスピードで実現できることを確認した。今後、熟練者への負荷が高い様々な業務への適用を進め、人のパートナーとなりうるAIの開発に取り組む。


 背景

 近年のディープラーニングに代表されるAIの発展に伴い、商品の検品検査や需要予測、顧客の嗜好分析などの領域で、AIの活用が増えている。
 しかし、意思決定問題など、高度なスキルが要求される分野への適用においては、利用可能な品質になるまでに繰り返しのヒアリングや熟練者の無意識行動の反映等を含め、膨大な試行錯誤が必要となっていた。また、導き出される結果と熟練者の判断レベルに乖離があり、この分野での適用が困難だった。

 本技術は、NEC独自の機械学習アルゴリズムにより、熟練者が行っている高度な業務の意思決定を再現することができ、これまで以上に幅広い領域で業務効率の向上を可能にする。


TV放送局の広告スケジューリング業務での適用内容
 


 本技術の特長

 1.複雑な意思決定を複数の意図に分解して学習

 従来の逆強化学習では熟練者の一連の行動を単一の意思決定モデルとして学習するため、状況に応じた複雑なモデルを構築することは困難だった。本技術では、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」(注3)の1つである異種混合学習(注4)を拡張して、行動履歴データから複数の意思決定モデルとそれらの切り替えルールを学習する。
 これにより、熟練者が時と場合より柔軟に使い分ける判断基準を、非熟練者でも理解しやすいロジックで説明でき、熟練者と同等レベルの意思決定を行うことができる。例えば、営業販売に適用した場合、成約率の高い営業の行動履歴を学習し、顧客(見込み客、常連客など)ごとに異なる最適な対処を学習し、経験の浅い営業に活動指針を出すことが可能となる。

 2.意思決定モデルと制約を同時に学習

 本技術では、熟練者の過去の行動履歴から、意思決定モデルだけでなく制約も同時に学習する。熟練者と同等レベルの意思決定をするためには、大きなリスクを避け、効果を最大化にする施策を選択する必要がある。本技術では、熟練者が選択しない行動はリスクがあるため避ける制約、常に行っている行動は守るべき制約と見なし、熟練者が考慮し最適化しているモデルと組み合わせて同時に学習する。このように意思決定モデルと制約を同時に学習することで、熟練者が無意識に行っている安全で信頼性の高い判断と同等の意思決定が可能となる。

 3. 学習環境の簡略化

 一般に、逆強化学習を実行するためは、行動履歴データ、行動により最適化対象の状態がどう変化するかを模擬する状態遷移モデル、学習した結果の正誤を確認するための実験機やシミュレータが必要になるが、現実世界を精巧に模擬できる状態遷移モデルの作成は困難。本技術では、熟練者・非熟練者の行動履歴データからのサンプリングにより意思決定モデルを評価できるモデルフリー方式(注5)を新たに開発した。本方式を採用することで、コストのかかる精緻な状態遷移モデルの準備が不要となり、学習環境を大幅に簡略化することが可能になる。また、学習途中の意思決定モデル評価をシミュレータ等で実行する必要もないため、学習が既存逆強化学習の100倍の効率で実現できる。

 これらの技術により、自動運転やロボット制御などの物理・人工システムだけでなく、営業活動やプラント運転などの状態遷移が不確定なシステムで人が意思決定を下す属人的な業務にまで適用先を広げることが可能となり、幅広い領域でAIによる業務効率化が可能になる。

 なお、性能評価の成果の一部は、人工知能の国際会議である「KDD2019(ACM SIGKDD CONFERENCE ON KNOWLEDGE DISCOVERY AND DATA MINING)」(会期:8/4(日)~8(木)、会場:Anchorage convention centers, Alaska, USA)において発表する。


(注1) 逆強化学習:報酬を基に最適行動を導きだす強化学習に対して、最適行動から報酬を推定するため逆強化学習と呼ばれる
(注2) 広告スケジューリング業務:広告宣伝の効果やスポンサーの好みを考慮しながら、複数のTVコマーシャルを限られた番組時間枠に最適に割当をする業務
(注3) 「NEC the WISE」(エヌイーシーザワイズ)は、NECの最先端AI技術群の名称です。"The WISE"には「賢者たち」という意味があり、複雑化・高度化する社会課題に対し、人とAIが協調しながら高度な叡智で解決していくという想いを込めている。
(注4) 異種混合学習技術:ビッグデータに混在するデータ同士の関連性から、多数の規則性を自動で発見し、分析するデータに応じて参照する規則を自動で切り替える技術。これにより、単一の規則性のみを発見し参照する従来の機械学習では分析が困難な、状況に応じて規則性が変化するデータでも、高精度な予測や異常検出が可能。
(注5) 環境のダイナミクス(状態遷移モデル)が既知でない場合でも、強化学習・逆強化学習が適用できる方式



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