2018年1~6月
 
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2018-6-20

視認性の悪い夜間で250m先の物体を検知
TOF方式長距離画像センサを開発
 APD採用の25万画素で高解像度を実現
パナソニック

 パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、視認性が悪い夜間においても250m先にある物体までの距離情報を画像化する、アバランシェフォトダイオード(APD)画素を用いたTime of Flight(TOF)方式距離画像センサを開発した。本センサは、車載用距離測定や暗闇での広域監視など、さまざまな分野へ展開可能。

 今回開発したTOF方式距離画像センサは、光が物体で反射して戻ってくるまでの飛行時間(TOF)を全画素で直接計測し、近距離から遠距離までの三次元距離画像を一括で取得する。入力信号を増幅するAPDを受光部に用いるとともに、微弱な入力信号を積算する演算回路を全画素に内蔵することで、250m先までの三次元距離画像化を可能とした。さらに、電子増倍部と電子蓄積部とを積層化、APD画素の小面積化により世界最高となる25万画素の集積化を実現※1。従来は困難であった三次元距離画像の長距離化と高解像度化との両立に成功した。

 【特長】
  1. APD画素を用いた高解像度かつ高感度な距離画像センサ
    25万画素:従来比約4倍※1
  2. TOF方式で長距離の三次元距離画像を取得
    1-250m:従来比約2倍※2
 【内容】
 
  1. APD画素化技術
    光電子を増幅する増倍領部と電子を保持する電子蓄積部を積層化することで、増倍性能を維持しながらAPD画素の面積を大幅に低減した。
  2. 長距離計測画像化技術
    受光部に到達した光子[3]の検出回数を数える積算回路を全画素に内蔵。光子1個が届くか届かないかの微弱な反射光であっても確実に捉え、高密度な距離画像を実現した。
 【従来例】

 ステレオカメラなど従来のカメラ技術は夜間の認識精度が低下してしまうという課題がある。一方、赤外線を用いたLiDARは夜間も使用できる反面、解像度が低いため小物体の特定が困難になり、検知漏れが発生するという欠点があった。

 【用途】

 産業/監視/車載センシングカメラ


※1 学会発表等で公表されている増倍画素を搭載した距離画像センサにおいて(2018年6月8日時点。同社調べ)
※2 学会発表等で公表されている増倍画素を搭載した距離画像センサの動画撮像時において(2018年6月8日時点。同社調べ)




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2018-5-10

 
EmpathとNTTドコモ
雑音環境での音声感情認識技術を開発
-こころに寄り添うカーインフォテイメントの実現に向けて-

 EmpathとNTTドコモとは、雑音環境での音声感情認識技術を2018年3月に共同で開発した。2018年度にAIインフォテイメントサービス※1に導入することをめざす。

 同技術は、NTTグループのAI「corevo®」※2を構成するドコモ独自の音声感情認識技術とEmpathの音声感情解析AI「Empath」の技術をもとに開発した。同技術を用いて自動車とドライバーを感情によって結びつけることで、ドライバーが自動車に愛着をもって楽しく運転したり、運転に集中して居眠り運転の解消などに貢献できる。

 2017年11月から2018年3月までの間、ドコモとEmpathは、走行雑音がある環境で音声による感情推定の認識率向上の取り組みを行っている。その結果、停車中のような雑音が小さい条件から高速道走行中のように大きな走行雑音がある条件において、自然に発声された対話音声※3の「怒り」「喜び」「悲しみ」の感情の認識を従来60%程度※4のところ、業界で最高水準の高い平均正答率※5となる75%で実現した。
 また、AIが感情を理解して感情にあわせた声かけを行うことで、ドライバーの眠気やだるさなどの倦怠感を表す指標値が50%減少し、被験者の93%はAIが自分の気持ちに寄り添ってくれていると感じて、気分良く運転できることを実証実験にて確認している。

 これにより、安心・安全な運転に貢献し、自動車に愛着が生まれるような新たなサービスの創出に取り組んでいく考え。


  1. ドコモが提供する自動車向けの音声エージェントサービス。
  2. 「corevo」は、日本電信電話株式会社の登録商標です。(http://www.ntt.co.jp/corevo/
  3. 発話者が特定の感情の音声を意図的に発声しようとせずに自然に発声された音声。
  4. ドコモの調べに基づく。
  5. ある感情の音声に対してその感情の音声であると正しく認識できる確率。

 開発技術の概要

 1. 技術概要

 認識対象の音声に対して声の高さや音色などの音響的な特徴を分析し、あらかじめ機械学習で生成しておいた感情認識モデルを用いて、音響的な特徴からどの感情の音声であるかを推定する。走行時の自動車のエンジン音等の特徴を取り入れた認識モデルの生成技術により、停車中を想定した雑音が小さいSNR(Signal to Noise Ratio:信号対雑音比)が15dB以上の条件から、高速道路走行中を想定した雑音が大きいSNRが0dBの条件において、「怒り」「喜び」「悲しみ」の3感情の平均正答率75%を実現した。


音声感情認識のしくみ


 2. 各社の役割

役割表
Empath
  • 入力された音声に感情が込められているかを判定し、明確に感情が表れている音声を正しく認識して誤認識を抑える技術の提案。
ドコモ
  • 雑音が小さい環境(停車時)から大きい環境(高速道走行時)の条件で、自然に発声された音声の感情を正しく認識する技術の提案。
  • 両社提案技術を組み合わせる方法の考案。


 実証実験の概要

 1. 実施者

 ドコモ、Empath社

 2. 実験日程

 2018年2月10日~3月27日

 3. 被験者数

 60名(男性30名、女性30名、平均年齢:41歳)

 4. 目的

 感情を考慮したAIの発話による利用者の感情状態に対する影響の検証

 5. 実験詳細
  • 乗車時の環境を模したシミュレータに音声エージェントアプリを設置し、被験者の感情状態に合わせて適切な対話スクリプトを用意し、アプリによる介入前後での感情状態の変化を計測。
  • 対話スクリプトは精神科医、臨床心理士等の監修のもと、ポジティブ心理学や認知行動療法のメソッドを用いて気分を快にするスクリプトを作成。
  • 感情状態の変化の計測には、妥当性検証済の心理尺度アンケート等を利用し、効果を測定。

 6. 実験結果
  • 本実験により感情を考慮した音声エージェントアプリによる介入によって、被験者に対していくつかの感情の変化を起こすことに成功。
  • 一例として、感情を考慮したアプリの介入により、感情・覚醒の度合いを示すアラウザルチェックの眠気や倦怠感を示す値が有意に低下。感情を考慮しないアプリの場合では眠気や倦怠感は有意に変化しなかった。
  • 感情を考慮したアプリの介入によって気分がよくなり、倦怠感が低下しドライバーが覚醒したと考えられる。
  • その他にも楽しい気分の持続や悲しい気分の低下を確認。



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2018-4-17


高い強度と骨置換性を持つ人工骨を3Dプリンターで製作する手法を開発 
理化学研究所/ リコー

 

 理化学研究所(理研)光量子工学研究センター画像情報処理研究チームの大山 慎太郎客員研究員、辻村有紀テクニカルスタッフⅠ、横田秀夫チームリーダー、技術基盤支援チームの山澤建二副チームリーダー、リコーの渡邉政樹スペシャリストの共同研究グループは、患者の骨の内部を含む欠損部位の形状を再現した「人工骨」を「3Dプリンター[1]」技術により製造する手法を開発した。
 本研究成果は、骨に関わる疾患の早期治療や患者の生活の質(QOL)向上に貢献することが期待される。

 今回、共同研究グループは、BJ(Binder Jetting)方式[2]をベースに、α-リン酸三カルシウム[3]の粉末に対してエチドロン酸などの新しい凝固インクを用いた粉末積層装置により、人工骨の3次元造形手法を開発した。本手法は、3Dプリントしてすぐに使え、高強度で高い骨置換性[4]を持つ3次元造形人工骨を造形することができる。作製した人工骨の生体適合性を、培養環境下での培養細胞の増殖率と動物への移植実験の組織観察により調べたところ、良好な細胞の増殖率に加えて、速やかに本来の骨組織に入れ替わることを確認した。これは、骨本来が持つリモデリング機能を阻害しない良好な人工骨であることを示している。

 本研究は、米国アトランタで開催されるSociety For Biomaterials' 2018 Annual Meetingにおいて研究成果の発表(4月11日および13日付け:日本時間4月12日および14日)を行う。


 3次元造形人工骨(左)と動物に移植した人工骨(右)


 [1]
3Dプリンター
設計データをもとにして、特定の材料の2次元の層を自動的に1層ずつ積み重ねていくことによって、所望の立体形状を造形する装置。
 [2]
BJ(Binder Jetting)方式
粉末材料にインクジェット装置により結合剤を塗布し、固着させ積層する原理の3Dプリンター。
 [3]
α-リン酸三カルシウム
化学式:Ca3(PO4)2で表されるリン酸とカルシウムの塩。αは単斜晶系のリン酸カルシウムであり、六方晶系のβに比べて、可溶性と生分解性が優れている。
 [4]
骨置換性
材料の生体骨への置換が促される性質を持つこと。材料は、骨誘導能や伝導能を持ち、骨原性細胞の遊走・分化・増殖を助ける働きを持つ。


 関連コンテンツ
 理化学研究所 報道発表資料


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2018-4-5

スマートフォンやICカードを画面にかざすことで決済や認証ができる
透明NFC(近距離無線通信)アンテナ搭載ディスプレイを開発
 シャープ
 

 シャープは、透明※1なNFC※2アンテナを搭載したディスプレイを開発した。スマートフォンなどのNFC対応機器やICカードをディスプレイにかざすことで、簡単に通信を行うことができる。

 NFCは、スマートフォンや交通系ICカードなどに採用され、決済や認証など、様々な用途での活用が拡がっている。近年、クレジットカードへの搭載も進むなど、今後のさらなる普及が見込まれている。

 同ディスプレイは、透明化したNFCアンテナを画面上に配置。表示性能を損なうことなく、ディスプレイとNFCリーダーの機能を一体化した。外付けのNFCリーダーが不要な上、画面上の任意の場所※3で通信することが可能となった。画面上に文字やイラストでスマートフォンをかざす位置やタイミングを示したり、通信結果をお知らせしたりできるので、直感的なユーザーインターフェースを実現できる。また、一度に複数の機器やICカードと通信することも可能。

 同社は、本ディスプレイをPOSターミナルや自動販売機などにおける決済用途はもちろん、オフィスや教育・医療機関における個人認証、ゲームなどのアミューズメント向けなど、様々なアプリケーション向けに提案し、革新的なユーザーインターフェースによるディスプレイの新たな価値創出に取り組んでいく考え。

  主な特長

 1.NFC対応のスマートフォンやICカードをディスプレイにかざすことで通信できる直感的なユーザーインターフェースを実現

 2.一度に複数の機器やICカードとの通信が可能

 3.決済や認証のほか、アミューズメント向けなど、幅広いアプリケーションに応用可能


※1 アンテナ層の光透過率80%以上を確保している。光透過率はサイズやアプリケーションにより変動する。
※2 Near Field Communication(近距離無線通信)の略。国際標準規格として認証された、数センチメートル程度の近距離間で無線通信を行う技術。
※3 適用する通信規格やアプリケーションにより、アンテナ層の光透過率の低下やアンテナを配置する面積が制限される場合がある。




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2018-3-30

「振動データの見える化システム」を開発
~様々なアプリケーションへの展開を視野~
 リコーインダストリアルソリューションズ

 リコーインダストリアルソリューションズは、設備や機械が発する振動を見える化するセンシングシステムを開発した。

 独自開発のセンサーとデータ解析技術を組み合わせることで、設備や機械の異常を検知するために必要なデータを抽出することを可能としており、製品の品質に影響する製造機械の異常振動や突発的な衝撃、健全性の確認など、今まで把握できなかった状態特性をリアルタイムに数値化して把握することができるようになる。そして、工場での活用にとどまらず、公共交通機関や常時稼働しているインフラ機器の状態監視など、様々な用途に展開が可能となる。機械の故障未然防止やダウンタイム短縮、メンテナンスの簡素化といった安定した設備稼働の実現と共に、将来的には予兆保守への取り組みといった新たな付加価値を随時提供していく。

 このシステムは、リコーグループが保有する振動の解析技術、AIアルゴリズム、産業機器向けのコントローラ技術等を組み合わせて実現したもの。 今後、リコーインダストリアルソリューションズは、「振動データの見える化システム」のビジネス展開を見据え、機器メーカー様向けのみならず、稼働機器のユーザーの皆様に対し、すぐに使える、使いやすく最適なソリューションの提供を目指し、さらなる技術開発を進めていく考え。





 技術優位性

 1. 必要成分のみを抽出可能な独自の振動や音響の解析技術

 外乱やノイズに埋もれた信号から必要な成分だけを取り出すリコー独自の解析技術を応用し、設備や機械で発生する様々な振動や音響データを診断や検知に活用する。

 2. ユーザー向けにデータを最適化するAIプログラミング

 振動から抽出したデータからユーザーが活用できるスコアを生成し、ユーザーが直接振動データを分析、解析しなくても有益な情報を得られるような指標やメッセージを提示する。

 3. 高信頼性により生産性と品質向上に貢献するコントローラ技術

 高品質、長期安定供給、幅広いカスタマイズ能力を強みとし、FA、金融、医療、インフラ等の様々な領域で採用されている。長期にわたるコントローラビジネスで培った技術を今回のシステムに展開し、信頼性の高い製品を提供する。




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2018-3-27


オススメ度に合わせて的確に案内する音声対話AI技術を開発
東芝

 
 東芝は、ショッピングセンターの案内システムなどで、店舗や商品等のオススメ度によって案内の仕方を変更できる音声対話AI技術を開発した。システム運用者が商品や店舗等に設定したオススメ度にあわせて、音声対話AIは対話シナリオを変更し、オススメ度の高い商品や店舗をユーザに自然に提示する。これにより、システム運用者は毎日更新されるセール商品等を効率良く案内することが可能となる。同時に、案内を利用するユーザは、常に最新のセール情報を加味した上で希望した条件に合う結果を得ることが可能となる。同技術は、今月開催された人間とのインタラクションを研究対象とする会議「インタラクション2018」にてデモ発表した。

 開発の背景

 音声対話AIは、AIスピーカの登場などで一般ユーザにも浸透し始めている他、顧客の質問や要望に自動で応答する窓口サービス等での商業的応用への適用拡大が期待されている。
 今後の適用拡大においては、従来のAIスピーカに搭載されているような一つの質問に対して一度答えを返す対話だけでなく、人間と音声対話AIが何度かやりとりをして目的を達成する複雑な応答処理を可能にする対話技術が必要となる。また、従来システムにおいては、季節や商品等の日常的に変化する状況に合わせた対話シナリオの変更に音声対話技術の専門的な知識が必要なため、変更が困難であるという課題があった。

 本技術の特徴

 そこで、同社は、状況変化に柔軟に対応できる音声対話AIとして、店舗や商品検索等の問い合わせに対しオススメ度にあわせた案内をする音声対話AIを開発した。今回開発したAI技術は、次の3つの特徴をもつ。

 (1)ユーザの検索条件を満たしながらオススメ度を反映した対話シナリオを生成
 ユーザの検索満足度を保ちながら、オススメ度の高い候補をできるだけ多く自然に提示できる対話シナリオを実現した。今回、機械学習の一種である強化学習において、ユーザが音声対話AIとの対話で目的を達成できたかどうかという一般的な強化学習の報酬に加え、ユーザ満足度に関する報酬およびシステム運用者の満足度に関する報酬を組み合わせて学習することでこれを実現した。ユーザ満足度に関する報酬は、目的達成までに要したやりとりの回数、および絞り込まれた候補数に基づいて設定し、システム運用者の満足度に関する報酬は提示した候補のオススメ度に基づいて設定している。この手法を、人間の主観評価による満足度と、オススメ度の高い店舗が紹介された回数により評価を行った所、従来のシステムと満足度が同等で、オススメ度の高い店舗の提示回数が約250回から約300回と1.2倍に増加した。

 (2)簡単な操作で対話シナリオを変更可能
 強化学習の枠組みにオススメ度を導入したことにより、システム運用者は各店舗に割り当てられたオススメ度を操作するという簡単な操作によって、対話シナリオを生成することができる。

 (3)汎用性の高い学習対話モデル
 同社独自の強化学習向け特徴量生成手法により、レストランの検索やホテルの検索、ショッピングセンターの店舗の検索などに対する問い合わせに共通で利用できる対話モデルを開発した。これは強化学習に与える特徴量を様々な対話シナリオに対して共通に使える形に変換することによって実現している。

 今後の展望

 本技術は、東芝デジタルソリューションズのコミュニケーションAI「RECAIUS™(リカイアス)」での活用など、2019年度を目標にサービス展開を検討していく。本技術により、音声対話AIの対話シナリオをシステム運用者が設定したオススメ度に合わせて適切に変更することが可能になる。将来的には、システム運用者が音声対話AIに指示することにより、柔軟に状況変化に対応できる音声対話AI技術の構築を目指していく。




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