2018年7~12月
 
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2018-12-27

AIモデルの学習を26倍高速化、学習電力効率を90倍に
~高速/低消費電力なGBDTモデル学習回路アーキテクチャを開発~
リコー

 リコーは、人工知能(AI)の学習方法である機械学習において、近年注目されている手法のGradient Boosting Decision Tree(GBDT:勾配ブースティング決定木)モデルの学習を大幅に高速化・低消費電力化する回路アーキテクチャを開発した。




 この回路アーキテクチャを、Field-Programmable Gate Array(FPGA:設計者がプログラムによって設定を変更できる集積回路)上に実装して性能を比較したところ、CPU/GPUを用いた一般的なソフトウェアライブラリ(XGBoost (extreme gradient boosting)、LightGBM、CatBoost)と比べて、26~259倍の学習高速化を実現。従来よりも短時間でのGBDTモデルの学習・更新が可能となった。また、学習時の消費電力も小さく、モデル学習の電力効率は、GPU/CPUと比較して90~1,105倍となった。この低消費電力という特徴により、エッジコンピューティングへも活用を拡げられると考えている。また、学習したモデルの予測精度においても、これらのソフトウェアライブラリにより学習したモデルと同等であることを確認した。

 GBDTは、データベースなどで構造化された大量データの学習に高い性能を発揮する。応用先として、オンライン広告のリアルタイムビディング(Real-Time Bidding)、Eコマースでのリコメンデーションなどのweb分野、コンピューターによる株式の高頻度取引(High Frequency Trading)などの金融分野、サイバー攻撃の検出などのセキュリティ分野、ロボティクスなどが考えられ、リコーが開発した回路アーキテクチャによる高速学習は、これらの応用先に今後貢献するものと見込まれる。また、近年注目を浴びているIoT (Internet of Things)デバイスを始めとする各種エッジデバイスにおいても、その高い電力効率を活かして、高度なモデルの学習が可能となる。

 研究開発本部 リコーICT研究所の研究グループは、同技術の研究成果を米国コーネル大学が運営する世界的な論文投稿サイトarXiv.orgで発表した。(https://arxiv.org/abs/1812.08295

 リコーは、お客さまへの提供価値をEMPOWERING DIGITAL WORKPLACESと定め、これまで培ってきた経験に新たなアイデアや技術を融合させ、更なるイノベーションの創出に挑戦している。昨年にはAI開発に関する専任組織「AI応用研究センター」を設立して、AIの製品への搭載や、社内の業務改革への適用などに取り組んでいる。進化の速いAI技術分野では、自社のみですべての技術を用意するのではなく、パートナーとの連携が必須となる。リコーは、独自性のある高度な技術開発を進め、先進的なパートナーとの協業を加速させることで、世界トップレベルの技術を開発することを目指しており、今回の回路アーキテクチャ開発もその一環となる。




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2018-11-27

キヤノン独自の3Dプリンター用セラミックス材料と部品作製技術を開発
複雑な形状の部品を高精度に作製可能


開発した技術で作製したセラミックス部品


 キヤノンは、独自の3Dプリンター用セラミックス材料を用いて、複雑な形状のセラミックス部品を、高精度に作製する技術を開発した。今後、セラミックスの優れた絶縁性・耐熱性・耐食性を生かし、本技術で作製したセラミックス部品が、産業機器をはじめとしたあらゆる分野で活用されることが期待される。

 樹脂や金属などの材料を用いた3Dプリンターは、多品種少量の部品を手軽に試作・製造できるため、広く普及し始めている。しかし、これまでの3Dプリンター用セラミックス材料には樹脂を含むものが多く※1、造形後の焼成工程において20%程度の収縮が生じるため、高精度な部品作製が難しいとされていた。

 今回、キヤノンは、3Dプリンターの造形法である選択的レーザー溶融法※2に適したアルミナ系セラミックス材料と部品作製技術を新たに開発した。本技術の活用により、一般に金型での成形や切削加工が難しい中空構造や多孔質構造など複雑な形状のセラミックス部品を、3Dプリンターで安定的に作製できる。例えば、六角形の空孔をもつ直径約19mmのハニカム形状部品※3を作製した場合、焼成工程前後の外形寸法変化が0.8%未満の高精度な部品を作製することができる。

 本技術により作製されたセラミックス部品が、電気炉などの耐熱性・絶縁性を要する部品や、薬品に対する耐食性が求められる部品など、産業機器をはじめとしたあらゆる分野で活用されることが期待される。
 キヤノングループにおいては、キヤノンマシナリーなどと本技術を生かした産業機器向け部品の試作検討を始めており、実用化を目指して開発を進めている。
 今後、材料の種類を拡充することにより、医療分野への展開を図るなど、より幅広い分野の試作ニーズや多品種少量の製造ニーズに応えていく考え。


※1例えば、紫外線で硬化する樹脂を加えたセラミックス材料を用いて光造形法で造形する場合。
※2
金属の造形で一般的に用いられ、材料にレーザーを照射する事で溶かして積層する3Dプリンターの造形法の一種。
※3中央の写真に示される部品(直径約19mm、厚さ約2mm、線幅約0.4mm)。




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2018-11-8

レーザースキャン方式車載ヘッドアップディスプレイ(HUD)用
プロジェクションユニットを開発
リコーインダストリアルソリューションズ

 リコーインダストリアルソリューションズは、センシング技術を中心とした走行安全支援技術、及び車室内エレクトロニクス技術の進展に伴い、革新が求められる車載HMI*1分野に向けてレーザースキャン方式車載HUD用プロジェクションユニットを開発した。

 HUDは、車速やナビゲーションなどの情報をフロントウインドウに投影するもの。従来のカーナビゲーションシステムやメーターに比べ、ドライバーの視線移動を減らすことで、運転時の疲労軽減やよそ見による事故のリスクを低減するメリットがある。さらに、今後は車両に設置された様々なセンサーとの連携によるドライバーへの高度な注意喚起やAR*2技術の実現が期待されている。リコーインダストリアルソリューションズは、そのような高度化するニーズに応えるため、複写機の開発・生産を通じて培われたリコーのレーザー描画技術、及び車載HUD用途で新たに自社開発した2軸MEMS*3スキャナーを用い、運転環境に埋もれることのない色彩表現でドライバーへの注意喚起を効果的に行うプロジェクションユニットの開発に成功した。

 レーザースキャン方式は、TFT方式に比べ、高コントラスト*4、かつ、広色域の色表現*5が可能であり、同じ輝度でもより明るさを感じやすい特性がある。これにより、注意喚起やAR表現の阻害要因であるポストカード*6の影響を軽減し、運転状況や人間特性を考慮した独自のアルゴリズムも活用することで、重要な情報を的確に伝達することができる。さらに、リコーインダストリアルソリューションズは、レーザースキャン方式特有の課題である画質と車載信頼性に対して、マイクロレンズ技術を応用したスクリーン*7と2軸MEMSスキャナーを内製で独自開発を行うことにより、高画質・高信頼性*8を実現した。

 今後、リコーインダストリアルソリューションズは、2020年以降の量産開始に向け、製品化を加速していく方針。


*1 HMI(Human Machine Interface):人間と機械が情報をやり取りするための手段、及びそのための装置・ソフトウェア。
*2 AR(Augmented Reality):拡張現実
*3 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):微小電気機械システム
*4 10,000:1以上
*5 NTSC比:約190%
*6 TFT方式のHUDで、主に低照度環境時に見える、画面形状を反映したバックライトの漏れ光
*7 スクリーン
*8 信頼性達成レベル:AEC-Q101相当




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2018-11-5

CCCMKとパナソニックが業務提携し、
光ID技術「LinkRay」を活用した、電子スタンプサービスを共同開発

 カルチュア・コンビニエンス・クラブのグループでマーケティングプラットフォーム事業を手掛けるCCCマーケティング(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:北村和彦、以下「CCCMK」)とパナソニックは、LED光源から送信されるID信号をスマートフォンで受信して情報を素早く入手できる、パナソニックの光ID技術「LinkRay」を活用した電子スタンプサービス『光スタンプ※』を共同開発し、2018年11月5日より、CCCMKが提供するポイントカードまとめアプリ「スマホサイフ」で提供開始する。

 経済産業省によると、2015年時点で日本のキャッシュレス決済比率は18 %と、韓国89 %、中国60 %、インド38 %に比べて低く、政府は2025年にキャッシュレス決済比率40 %を目指し、スマートフォンを使った決済基盤を提供する事業者に補助金を供与し、小売店には決済額に応じて一定期間の税制措置を検討するなど、キャッシュレス化推進に向けた支援に乗り出す方針。

 キャッシュレス化に伴うスマートフォンによる決済や、お財布自体も持たない生活(=ウォレットレス化)など、環境やライフスタイルの変化を視野に、両社のアセットを掛け合わせることで、新たな顧客価値提供および、小売流通店舗の運営効率化に向けたソリューションを提供したいと考え、電子スタンプサービス『光スタンプ』を共同開発した。

 『光スタンプ』は、導入店舗に設置された「LinkRay」対応卓上発信機に「スマホサイフ」アプリからカメラを起動し、かざすだけで、商品購入時にスタンプが押印され、スタンプ数に応じてクーポンやお得な情報を利用できる電子スタンプサービス。

 小売流通店にとっては、「LinkRay」対応卓上発信機を準備するだけでサービス導入でき、来店客数やスタンプ発行状況などのログデータを可視化することで、CRM活動に役立てる。
 CCCMKが提供しているポイントカードまとめアプリ「スマホサイフ」と、パナソニックの光ID技術「LinkRay」を生かして共同開発した『光スタンプ』の開始により、「スマホサイフ」導入店舗の課題解決やお客さまの満足度向上に貢献し、本格的なウォレットレス社会到来に向けて、先進技術を生かしたソリューションを提供していく考え。


 
【サービスご利用イメージ】


 ■「スマホサイフ」について

 "スマホひとつでポイントから決済まで利用できること"をコンセプトとした無料アプリ。ファミリーマート、ウエルシア、TSUTAYA、マツモトキヨシ、モスバーガーなど、全国で利用可能。財布の中にあるさまざまなポイントカードや電子マネーをまとめて管理でき、マクドナルドやガストなど、対象店舗のクーポンやお得な情報を利用者に届ける。また、アプリ内のバーコードやQRコード、スタンプカード画面を店舗で提示することで、カードレスで便利なお買い物を楽しむことができる。

 ■「LinkRay」について

 光ID技術「LinkRay」は、LED光源から送信されるID信号をスマートフォンで受信して情報を素早く入手できるもの。街の中で使われている明かりや光(デジタルサイネージ、看板、「光ID」送信機能付きのLED照明)等から発信された光信号(ID)をスマートフォンのカメラで読み取る(専用アプリで撮影)だけで、さまざまな情報を入手することができる。
 アプリを起動してカメラをかざすだけですぐにIDを読み取れる高速性、高カバレッジな対応端末、IDのコピーを防ぐためのセキュリティが特徴。
 なお、光ID技術「LinkRay」は、パナソニックがビジネスの現場で長年培ってきた先進コア技術とB2Bシステム提供ノウハウを活用したIoTサービス「μSockets(ミューソケッツ)」の一つとして提供する。





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2018-10-25

構成の違う 2 つの文書の内容を比較して対応づける新しい AI 技術を開発
~ 10月24日から 26日に開催される「AI・業務自動化展」に出展 ~
リコー

 リコーは、構成の違う2つの文書の内容を比較し、文や段落を自 動的に対応させて重複や差異を明確にできる人工知能(AI)を活用した自然言語処理技術「ディープア ライメント™」を開発した。
 例えば、2 社でかわす契約書について、双方が作成した内容を比較し、契約書内で同様の内容を述 べている部分や過不足を一目瞭然にできるため、文書チェックの時間を大幅に削減する。これにより、 双方の意向の違いや検討すべき点を容易に見つけ出すことができるため、契約書作成の効率化に貢献 するなど、さまざまなシーンでの活用が期待できる。
 リコーは、今回開発した新しいAI 技術を、10月 24日から 26日まで、千葉県の幕張メッセで開催され る「第 2 回 AI・業務自動化展 秋」に出展する。

 このAI技術は、ディープラーニングによって学習した語句の意味に基づき、語句の意味だけでなく、 語句が属する文や段落の意味の近さも考慮することで、その出現順序に依存せずに文や段落同士を対 応づけるアルゴリズムを考案し、より一般的な文書の対応づけに適用することに成功している。
 リコーの法務部門での実務においてPOC(概念検証)を行った結果、人手で約24時間を要する482 条文の契約書の対応づけを 1分で実行でき、内容チェックの大幅な時間短縮と品質アップに貢献できたという。また従来のテキスト分類技術と比較した結果、2倍以上の対応づけの精度が得られている。

 リコーは、お客様への提供価値を EMPOWERING DIGITAL WORKPLACE と定め、これまで培ってき た経験に新たなアイデアや技術を融合させ、更なるイノベーションの創出に挑戦している。
 リコーは、昨年 AI 開発に関する専任組織「AI 応用研究センター」を設立して、AI の製品への搭載や、 社内の業務改革への適用などに取り組んでいる。進化の速いい AI 技術分野で、自社のみですべて の技術を用意するのでなく、パートナーとの連携が必須となる。リコーは、独自性のある高度な技 術開発を進め、先進的なパートナーとの協業を加させることで、世界トップレベルの技術を開発するこ とをめざしており、今回のディープアライメント™の開発もその一環。
 

契約書案の対応づけ例  

従来技術に対する優位性    
  




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2018-10-15

日立とKDDI総合研究所
スマートフォンで撮影した生体情報で公開鍵認証を実現する
掌紋向けPBI技術を開発
手のひらと顔で、専用装置を使わず安全・安心な手ぶら決済を実現

 


  日立とKDDI総合研究所は、スマートフォンやタブレットに付属の汎用カメラで撮影した掌紋(手のひらの皮膚紋理)から公開鍵認証*1(利用者の電子署名*2生成と署名検証)を行なう掌紋向けPBI*3技術を開発した。同技術では、汎用カメラで取得した生体情報を用いて、電子署名に必要な秘密鍵*4を一時的に生成して利用することができるため、秘密鍵の管理を不要とし、機微情報の漏えいやなりすましの防止効果を高める。また、生体認証用の専用装置も不要となるため、家庭や外出先など場所を選ばず、電子商取引やネットバンキングなど、様々なオンライン取引において本人認証が可能となる。さらに、既に確立した顔認証と掌紋向けPBIを1台のタブレットに組み込むことによりマルチモーダル*5認証を実現し、店頭でのスムーズでセキュアな手ぶら決済も可能となる。

 近年、政府、産業、社会のデジタライゼーションが急速に進展し、あらゆるサービスやデータに世界中どこからでもアクセス可能な世界が実現される中で、安全で確実な本人認証を手間なく実現することの重要性がますます高まってきている。例えば手持ちのスマートフォンを用いて、電子商取引やネットバンキングが手軽に使えるようになる一方、なりすましなどによる被害が拡大している。このため、安全・確実・便利なオンライン認証手段として生体認証技術の開発が進められている。しかし、生体認証が利用できるのは指紋センサーなどの専用装置を持つスマートフォンなどに限られ、取得した生体情報や秘密鍵を保護するセキュリティチップなどの専用装置も必要となるため、一部のユーザーや端末だけに利用が限定されていた。

  日立とKDDI総合研究所は、揺らぎ*6のある生体情報を安全な形式で電子署名に使うことができる日立独自のPBI技術と、KDDI総合研究所が開発した汎用カメラを用いた掌紋認証技術を組み合わせ、新たに掌紋画像の「位置ずれ補正処理」ならびに「揺らぎ低減処理」を開発することで、専用装置が不要な生体認証を実現した。また、顔で対象者を絞込み、手のひらで高精度な認証を行うマルチモーダル認証処理により、タブレット等でのセキュアな手ぶら本人認証を実現した。
  これらの処理の特長は以下の通り。

 1. 掌紋画像の位置ずれ補正処理

 掌紋向けPBI技術では掌紋画像をどこにも保存しないため、掌紋画像を使わずに位置ずれを補正する必要がある。そこで、手のひらの輪郭情報を補助情報として使用し、輝度の揺らぎに影響されにくい位相限定相関法*7による補正を行い、掌紋画像が不要となる位置合わせを実現した。

 2. 掌紋画像の揺らぎ低減処理

 PBI技術はある程度の揺らぎを吸収して本人認証を可能としているが、カメラに手のひらをかざして撮影する場合、手の開きや照明環境の違いなどによる揺らぎが大きく、本人認証を安定して行うことができない。このため本人認証時に手の開きや照明環境の違いを反映した複数種の掌紋画像を生成することで、本人であることを正しく判定する確率を高め、認証の高精度化を実現した。

 3. 顔検索と掌紋向けPBI技術を組み合せたマルチモーダル認証処理

 1台のカメラにより、顔や掌紋の情報を同時に取得して高精度な公開鍵認証を実現する、マルチモーダル認証技術を開発した。顔による対象者の絞り込みと掌紋向けPBI技術を組み合わせた手ぶら認証を実現する。

 4. 生体検知処理

 汎用カメラを用いた生体認証では、本人の写真や動画によるなりすましのリスクがある。このため、ディープラーニングなどの機械学習を活用し、撮影画像が本物か偽物かを見分ける生体検知技術も合わせて開発している。

 日立およびKDDI総合研究所が今回開発した汎用カメラの掌紋向けPBI技術に加え、日立は汎用カメラ指静脈技術*8の開発に取り組んでいる。これらの技術により、生体認証のラインナップを拡充し、マルチモーダル化を進めることで様々なお客様のニーズに応えていく。また、これまで培ってきたセキュリティソリューションとこれらの開発技術を組み合わせることで、より安全で安心な社会の構築に貢献していく考え。


*1 公開鍵認証:広く公開された公開鍵と本人だけが管理する秘密鍵を組み合わせる公開鍵基盤(PKI)による認証方式。公開鍵で暗号化されたものは、その対となっている秘密鍵でしか復号化できない。
*2 電子署名:紙文書における印章やサイン(署名)に相当する役割を果たすもの。主に本人認証や、偽造・改ざんの防止のために用いられる。
*3 PBI技術:Public Biometrics Infrastructure技術(公開型生体認証基盤技術)。静脈パターンなどの生体情報の「揺らぎ」を補正することで秘密鍵を抽出し、公開鍵暗号方式に基づく電子署名を生成する日立独自の技術。ICカードやパスワードに依存した鍵管理が不要となり、便利で低コストかつ確実な本人認証が可能な電子認証基盤が実現できる。また生体情報は「一方向性変換」により暗号学的に復元困難なデータ(PBI公開鍵)に変換して登録・照合されるため、元の生体情報はどこにも保存されず、漏えいリスクを最小化することができる。なお、従来技術では生体情報は「揺らぎ」を持つため毎回同じデータが取得できず、一意なデータである暗号鍵を生成することはできなかった。
*4 秘密鍵:公開鍵基盤(PKI)において用いられる鍵の一種。一般に公開せず、個人でもつ鍵のこと。公開鍵で暗号化されたものは、その対となっている秘密鍵でしか復号化できない。
*5 マルチモーダル:顔、指紋、掌紋、虹彩、静脈など、複数の生体情報を認証などの処理に使用すること。
*6 揺らぎ:アナログ情報である掌紋情報を数値化する際に、撮影角度や指の開き具合、照明などで数値が異なってくること。
*7 位相限定相関:デジタル信号化された画像をフーリエ変換で数学的に処理し、振幅(濃淡データ)と位相(像の輪郭データ)に分解し、位相情報を用いて画像の位置を特定する手法。
*8 2016年10月24日ニュースリリース「スマートフォンのカメラで指静脈認証を実現する技術を開発」




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2018-10-9

手ぶら決済に最適な非接触の生体認証融合技術を開発
キャッシュレス社会に向け、100万人規模の利用者のIDレス決済に対応
富士通研究所

 富士通研究所は、富士通研究開発中心有限公司と共同で、キャッシュレス社会の実現に向けて、手のひら静脈と顔情報のみで本人を特定し、非接触で認証できる生体認証融合技術を開発した。

 100万人規模での利用が想定される実店舗での決済や、イベント会場の入場における本人確認を生体認証で実現するには、登録された膨大な生体認証データの検索を効率化するために、カードなどのほかの情報を活用して照合対象者を絞り込んでいた。今回、決済端末やその付近に設置したカメラを使い、端末操作中に自然に顔画像を取得し照合対象者を絞り込むため、利用者は手のひらを端末にかざすだけでスムーズな決済が可能な技術を開発した。
 この技術により、IDレスの手ぶらでの決済が可能となり、より利便性の高いキャッシュレス社会を推進していく。

 同技術の詳細は、10月7日(日曜日)からギリシャ・アテネで開催予定の国際会議「ICIP 2018 (International Conference on Image Processing 2018)」にて発表した。また、10月16日(火曜日)から幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される「CEATEC JAPAN 2018」へも出展する。

 開発の背景

 近年、認証・認可の重要性が増している一方で、増え続けるIDやパスワードの管理の煩雑さを回避するために、生体情報による認証技術が注目されている。さらなる安全性と簡便性を求めて、IDカードの提示やパスワード入力なしに、生体情報のみで本人を特定する手ぶらでの認証技術が期待されている。

 課題

 従来、手のひら静脈認証は、グローバルにおいて銀行ATMや入退室管理、PCなどの個人利用端末へのアクセス管理などで主に活用されている。銀行ATMなど、数万人規模の利用者の手のひら静脈が登録されている場合、比較照合を効率的に行うために、カードなどのほかの情報を入力することでデータの絞り込みを行ってきた。今後、100万人規模の利用が想定される実店舗での決済へと利用範囲を拡大するには、非接触によるクリーンな環境で、かつ利用の負担を感じさせないより簡便な環境での認証が求められる。

 開発した技術

 今回、一般的なカメラで取得できる顔情報を活用して、利便性の高い手ぶらでの認証を実現した 。開発した技術の特長は以下のとおり。


  1. 高速に演算できる顔特徴抽出技術

    画像から精緻に本人を特定するためには、顔の向きや表情の変化などにも対応する高精度な特徴抽出を実現するための複雑な仕組みを構築する必要があるが、処理時間が増大するという課題がある。今回、精度を落とさずに複雑な仕組みを簡易的に模擬するアルゴリズムを開発し、処理サイズを約10分の1へ軽量化することに成功した。これにより、高度な顔認証を瞬時に処理することが可能になる。

  2. 手のひら静脈と顔情報を融合した生体認証融合技術

    決済端末利用中の自然な動作の中でカメラから取得できる顔情報を利用して、登録されている100万人規模のデータベースの中から類似するグループに絞り込みを行う。決済時など実際に認証が必要な時に、利用者が手のひらをかざすことで、絞り込んだグループから1人を迅速に特定する。また、手のひらをかざす操作で静脈のデータが一部取得できなかった場合でも、顔情報で認証に必要な情報が補てんできるため、2つの生体情報を利用することによる認証の安定性を向上できる。さらに、手のひら静脈と顔情報の処理を分離することで認証サーバへの負荷を軽減でき、顔情報の比較演算の高速性と相まって、計算リソースの増大を抑制できる。





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2018-9-5

組込み利用可能な小型レーザー3Dスキャナを開発
~小型・軽量ながら高精度を実現~
リコーインダストリアルソリューションズ
 


 リコーインダストリアルソリューションズは、産業用ステレオカメラなどの3Dビジョンセンサーとして、新たに組込み利用可能な小型レーザー3Dスキャナを開発し、ラインアップに加えた。

 同小型レーザー3Dスキャナは、小型・軽量でありながら、近距離において高精度な3次元形状計測を実現している。新規開発の単眼カメラとレーザースキャナで構成し、計測対象に縞状のパターンを投影することで三角測量の原理に基づき高密度な3次元データを取得する。

 リコーグループが保有する独自のMEMS※1ミラーデバイスと多波長を発光可能な50チャンネルからなるVCSEL※2アレイを組み合わせたレーザースキャン技術を開発しました。本技術により、小型・軽量(約75(w)×40(d)×36(h)mm、約150g)でありながら、光源となるレーザーに起因するスペックルノイズを低減し100um程度の奥行精度(一般的なレーザー※3照明利用時と比べて約3倍向上)を実現する。

 これらの特徴により、ロボットピッキングや形状検査システムの小型化、スペースや重量の問題で困難であった生産装置内部への搭載など、多様なシーンで3次元データの取得が可能になる。
 
 今後、リコーインダストリアルソリューションズは、3Dセンシング市場の拡大を見据え、リコーグループ各社と連携してさらなる研究開発を進めていく方針。


※1 Micro Electro Mechanical Systems
※2 Vertical Cavity Surface Emitting Laser
※3 単一の半導体レーザーダイオード



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2018-8-27

=セイコーエプソン=
商業・産業印刷における色再現性を高めるカラーマネジメント技術
「Color Control Technology」を開発

 セイコーエプソンは、商業・産業印刷における色再現性を高めるカラーマネジメント技術「Color Control Technology」を開発し、新技術を用いたサービスの提供を2018年度中に日本国内より開始する。

 サイネージやテキスタイルなどの商業・産業印刷においては、印刷物を常に均一な色で出力することが求められている。さらに印刷物の用途に応じて、顧客が指定する色を正確に再現したい、さまざまな印刷メディアに最適な発色で印刷したいといったニーズが存在している。しかし実際には、プリンターの機種・機体やメディアによって生じる色差を検証し、的確に色合わせを行う作業には非常に手間がかかることから、多くのお客様が“色”に関する課題を抱えている。

 新技術「Color Control Technology」は、これらの課題に対する最適なソリューションとして開発された。エプソン製プリンター導入のお客様の色合わせプロセスに際し、4つの技術「色予測」「色解析」「色変換」「色最適化」を用い、短時間で高精度なカラーマネジメントを実現する。これにより、商業・産業印刷ビジネスを行うお客様が、顧客ニーズにマッチした高品質な印刷と、高い生産性を実現できるようサポートする。

 エプソンは、同技術によって、商業・産業ビジネスを行うお客様に3つの価値を提供する。

 <Color Control Technology技術を用いたサービスの提供価値>

 1. ターゲットプリンターの色味を正確に再現「プリンターカラーマッチング」サービス

 現在お持ちのプリンターの色味を、エプソンプリンターで高精度にシミュレーションし再現できる「プリンターカラーマッチング」サービスを提供する。プリンター置換え時や、増設時の色変動リスクを低減する。

 2. クライアントの指定色を正確に再現「スポットカラーマッチング」サービス

 クライアントからの指定色をエプソンプリンターで高精度に再現できる、カラーマッチング環境を提供する。クライアントとの合意色を短時間で高精度に再現する。

 3. 印刷するメディアに最適な色彩を実現「メディアプロファイル作成」サービス

 屋外広告、ウィンドウディスプレイ、タペストリーなど、印刷するメディア・プリンターに応じて最適な画質・発色で印刷できるメディアプロファイル・印刷環境を提供する。

 同技術を用いたサービス提供については、2018年度中に日本国内から開始し、順次グローバルに展開する予定

 なお、2018年8月30日(木)~ 9月1日(土)に開催される「サイン&ディスプレイショウ2018」において、下記の関連セミナーを行う。

 1)エプソンブースセミナー:新カラーマネジメント技術「Color Control Technology」について

 8月30日(木)14:00~14:30 東京ビッグサイト西展示棟 西2ホール

 「サイン&ディスプレイショウ2018」エプソンブース(ブースNo.8)にて
 https://www.epson.jp/ec/event/sds2018/

 2)セミナー:次世代カラーマネジメントのあり方

 8月31日(金)11:00~11:30 東京ビッグサイト会議棟1階102

 「ワイドフォーマット プリンティング コンファレンス」にて(有料・事前申込制)
 https://www.tokobi.or.jp/sds/2018seminar/



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2018-7-24

リコーインダストリアルソリューションズ
路面状態を検出可能な車載用ステレオカメラを開発、量産

車載用ステレオカメラ

 リコーインダストリアルソリューションズは、自動運転技術のニーズが急速に拡大する自動車業界向けに、デンスステレオマッチング技術(高密度視差演算技術)を採用した車載用ステレオカメラをデンソーと共同開発し、2017年9月に量産を開始した。

 車載用ステレオカメラは、3次元画像処理技術にリコー独自のデンスステレオマッチング技術を採用することで、歩行者や車両、ガードレールなどの障害物の検出に加え、路面の状態まで認識することを可能にした。これにより車両が走行可能な路面(フリースペース)の検出が可能となり、ハンドル制御による障害物回避の実現に貢献している。

 従来型のステレオカメラは、エッジ検出を用いた視差演算を行うため、路面の凹凸などを正確に検知することはできなかった。これに対し、デンスステレオマッチング技術は、車両周辺を高密度に3次元で検知でき、路面の細かい凹凸まで検出が可能という特徴がある。しかしながら、膨大なデータを処理するため、自動車用安全装置に求められるリアルタイム性に課題があった。今回、データ処理の高速化を行うことにより、業界に先駆けて同技術を採用した車載用ステレオカメラの量産に成功した。

 同社生産センターでは、同車載用ステレオカメラを生産開始から累計約2万台出荷している。

 今後、リコーインダストリアルソリューションズは、ニーズが拡大・高度化する自動運転・ADAS(先進運転支援システム)分野でのさらなる事業拡大を図るため、リコーグループ各社と連携し研究開発を加速していく方針。



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